大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和24年(ヨ)669号 決定

申請人

大阪金属化学労働組合

右代表者

組合長

被申請人

大阪金属工業株式会社

主文

申請人の申請を棄却する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

申請人の主張によれば、申請人外三組合がよつて構成する大阪金属工業労働組合連合会は、旧大阪金属工業労働組合がその組織を変更した労働団体であつて同組合が被申請人との間に昭和二十三年十月二十五日締結した労働協約は、協約期間たる六ケ月を経過した昭和二十四年四月二十五日後新協約が成立するまで自動的に期間延長し存続する従つて申請人は右連合会の構成員組合であつて、右協約の有効存続確認の本訴を提起せんとするが、速に確認を得なければ協約上の諸権利を蹂躙される慮があるというのであつて、申請人はその主張する労働協約の当事者たる連合会の構成員であるというのであるから第三者であるが協約の効力につきこれが即時確定を求める利益を有するものと解せられ、且現在その不明確なるため著しい損害その他危険を生ずる慮あるときは仮処分によりこれを確定することを求め得ると考えられるから、本件について申請人にその主張の事実があるならば、権利保護を求め得るというべきである。よつてその主張の当否につき判断するに申請人は前記連合会は大阪金属工業労働組合が昭和二十四年二月二日組織を変更して成立した連合体たる労働組合であるというけれども疎甲第九号証の四に依れば大阪金属工業労働組合は、大阪金属工業株式会社の従業員を組合員とする単一組合であつて、斯る単一組合がその組合員の決議によつて規約を変更しても、単一組合としての構成を変更し得るにとどまり、同一従業員が構成する労働組合とはいえ、他の組合が集つて規約を定め構成する連合体に変更することは法律上不可能である。

斯る団体の組織は規約によつてきまるものであり、その構成員が全く異るものとなる以上、単なる組織変更の決議によつてはなし得ないからである。そして本件においては、疎甲第五号証の一、二第七、八号証、第九号証の一乃至四第十号証の一乃至五第十一、十七、十八号証乙第一号証の一、二第二乃至六号証を総合すると、前記大阪金属工業労働組合連合会は、申請人組合の前身たる大阪金属工業労働組合一津屋支部外三支部が昭和二十四年二月十四日規約を確定して結成した労働組合の連合組合であるが(本連合会に理事機関の定がなく、規約には連絡機関ということを述べているが、その団体交渉の目的より見て矢張り労働組合の連合体であると認める)旧大阪金属工業労働組合は同月二日代議員大会の決議により右連合会結成のため一旦解散した事実が認められる。この解散は大阪金属工業労働組合規約第三十一条に依るものであるから、旧労働組合法第十四条第三号にかかわらず有効である。そして右の如く旧大阪金属工業労働組合が解散したとすれば、大阪金属工業労働組合連合会が被申請人との間に特に右協約を承継する契約をしない限り、当然これを承継するものでなく、斯る承継の事実は申請人の主張疎明しないところであり、他に被申請人と大阪金属工業労働組合連合会との間に右労働協約が存続するという事実を認め得る疎明はないから、その存続を前提とする申請人の主張は、その余の点を判断するまでもなく採容できないからこれを理由ないものとして棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例